「裸のランチ」読了
読むきっかけ
言わずと知れたバロウズの代表作.長年読みたいと思っていた本の一つであり,バロウズ自体が難解であるという話をよく聞いていたので二の足を踏んでいたが,卒業した大学の図書館においてあったので早速借りて読んだ.(卒業して五年以上経過しているのに図書館使い倒している卒業生のクズっぷり)
感想
まず第一に,モダン文学と呼ばれる我々が「小説」と聞いて想像する文章は,心情は書いているが理路整然としており,はじめから最後まで読めば話の流れやいいたいことがだいたいわかるというようなもの(いわゆる「筋道がたっている」文章)だが,この本はそういうのはない.ドラッグ中毒特有の猜疑心やトリップしている状態,僕らには「見えていないもの」が見えている状態がそこにはあった.
理路整然としていない.句点で区切られた次の文字とはまったくつながりのない,脈略のない文章が続く.いわゆる「考えたことをそのまま書く」という「意識の流れ」と呼ばれる手法を用いているにしてもこれはクスリをキメているとしか思えない文章の連続である.
バロウズはモダン文学ではなく,「ポストモダン文学」の代表として語られることが多い.ポストモダン文学とはモダン文学の逆をやっているような作品である.つまり,筋道がなく,理路整然としていない,脳が直接語っているかのような手法である.
これがまた気持ちが良い.なんといっても間接的にドラッグキメているようなもんだから.章ごとに場面が飛ぶが,読み進めていくに連れて違和感がなくなっていく.そして中毒性のようなものすら感じる.これはハマる人はどっぷりハマるな,というのが本を読んでの感想.
他人にすすめられるか問題
「裸のランチ」は数十年後まで語り継がれるだろう偉大な作品であることは間違いないが,他人にすすめられるかというとまた別の話になるだろう.人を非常に選ぶ本なのだ.薬物を求めて薬屋に嘘をついて薬品をせしめたり(太宰治の「人間失格」でもありましたね),心情が妄想狂のソレであったりとアクしかないような文章であるため,変人,変態というような謗りは免れないだろう.この本は一人でこっそりと読むような本なのだ.
内容に触れないのはネタバレを恐れるとか「○○はいいぞ」のようによくわかんないけどよかったからとかではない.この本そのものにスジがないんだから感想もクソもないのである.
読む薬物とか,雰囲気を読む本というのが私のこの本に対する感想である.
すごいおもしろかったが,内容は頭に残らない,だがもっとバロウズが読みたい!という欲求を定期的に覚えるようになる・・・というなんとも不思議な本であった.
一生に一度は読んでみても決して損はないと思う.おすすめ.
- 作者: ウィリアム・バロウズ,鮎川信夫
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裸のランチ(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [Blu-ray]
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