論ずるに値しない。

論ずるに値しない文章を毎日書く。内容は読んだ本や今まで考えてきたことがメイン。

「日本の歴史を読み直す」読了

 最近話題の網野善彦先生の「日本の歴史を読み直す」を読んだ。

この本は過去に出版した「日本の歴史を読み直す」と「続日本の歴史を読み直す」を一冊にまとめた本で、これまで日本史を読むにあたって常識と思われている認識を丹念な史料分析で検証し、その結果を平易に説明しているものだ。

 例えばひらがなとカタカナの使い分け、カタカナは平易な文字で農民にも普及しており、たどたどしい文章が多いのはほんとうにそうなのか、いわゆる賎民はどのようにして形成されたのか。日本という国はいつから日本なのか。このようなことを短大の講義のように、語りかけるようにひとつひとつ語られる。

 

 この本はこういう常識を検証している本であるため、教科書的な歴史を取り上げていない。この本で中心となるのは庶民の生活であり、そこから見えてくる当時の常識である。

そういう観点からみると日本史の本であるというより民俗学の本であるようにも見える。

読んでいて非常に面白かった。歴史というのは政権の移り変わりでみるのもおもしろいが、庶民がどのような考えを持っていてどのように生きたのか、どのように物事を見つめていたのかを知るのも楽しみの一つ。その楽しみを教えてくれるいい本でありました。

おすすめ。

 

この本に興味を持ったのは自分のTumblrに流れてきたこの部分の引用によるものでした。

大宝律令のできた七〇一年に遣唐使が中国大陸に行くのですが、その時の使いは「日本」の使いであると唐の役人にいっています。つまり「日本」という国号も、これまで推古朝とも考えられていましたが、やはりこれも最近の説では七世紀の後半、律令体制の確立した天武・持統のころ、天皇の称号といわばセットになって定まったと考えられています。これも大変大事な点で、このときより前には「日本」も「日本人」も実在していないことをはっきりさせておく必要があります。その意味で縄文人、弥生人はもちろんのこと、聖徳太子も「日本人」ではないのです。

 

 

 

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)