論ずるに値しない。

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guesstimation感想。ロジカルに解くフェルミ推定

昨日紹介したGuesstimationの感想です。フェルミ推定に関する本では今まで読んできた中で一番の本でした。

 

Guesstimation: Solving the World's Problems on the Back of a Cocktail Napkin

Guesstimation: Solving the World's Problems on the Back of a Cocktail Napkin

 

 

 ・フェルミ推定とは

 たとえばシカゴにピアノ調律師は何人いるか、などの問題を論理的な仮説を用いて概算を出すような問題をフェルミ推定といいます。Googleマイクロソフトが面接の際に出題したことから有名になりましたが、これを大々的に知らしめたのは地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」という本でしょう。これは極めて明快にフェルミ推定とは何か、どうやって問題をとくかを説明した本で、入門には最適な本であるといえるでしょう。

 

・Guesstimationのねらい

 本書はこれらのフェルミ推定をよりロジカルに解説した本です。日本では「サイエンス脳のためのフェルミ推定力養成ドリル」という題で翻訳されています。この本は訳題の通り理数系に馴染み深い問題を、理数系の問題をとくのと同じプロセスで解決していこう、というテーマの本です。

 

・日本のフェルミ推定

 日本のフェルミ推定は「概算を出す」ということを非常に拡大解釈しているきらいがあり、数的根拠や算出方法については自由でいいよ、というスタンスで書かれていることが非常に多いです。例えば人口や世帯を非常にざっくりと仮定し、ここから大まかに「三人に一人」であったり「二十パーセント」と求めるなどなぜそこをそのようにしたのかという説明がざっくりしすぎています。Guesstimationはそこにこそフェルミ推定のキモがあるとして、非常にそこの位置づけを重要視しています。問題に対する解説もそこに至るまでの過程を非常に多くの紙面をさいています。

 

・本書の本当の読みどころは最終章にある。

 この本は最初は「シカゴにピアノ調律師は何人いるか」という基本的な問題からスタートしますが、最終章では計量化できないもの、リスクについても推定しようとしています。例えば「喫煙者は非喫煙者との間では寿命がどれぐらい開きがあるか」という問題がそれにあたります。

 おそらく通常の本では平均値同士の差を求めて年単位でおしまいになるでしょうが、この本では非常に細かく秒、日単位で算出しています。つまり、フェルミ推定においては計量化しうるものをつきつめていけばどんな微細な単位でも算出できるよ、だから式をしっかり作って計算しよう。というのが大きな結論です。

 

・文系な僕が勉強になったことは

 文系なので多くの問題がその立式にいたるまでの過程がチンプンカンプンでしたが、全部の問題でこの立式に至るまでの過程、数的根拠を突き詰めます。この突き詰めることができるところはとことん突き詰めることにより単なるあらましではなく非常に確度の高い推定が可能になる、ということです。思えば理数系は実験を行う前にある程度の予測が必要になるために当然のことなのですが、これを全てに適用していけば無駄なことをしなくてもいいじゃん、という姿勢がよく示された本であると思いました。理数系だけでなく文系にも頭のトレーニングの一環として読んでみることを強くおすすめします。