論ずるに値しない。

論ずるに値しない文章を毎日書く。内容は読んだ本や今まで考えてきたことがメイン。

ユーゴスラビアの崩壊を読む

 旧ユーゴスラビアの崩壊に関する血みどろの争いはかねてより紛争の火種とはなにか,という観点で最近関心を寄せていたところではあるが
この本は崩壊の経緯はもちろん書かれているが,実際に現地で体験した地獄としか言いようのない現状を記録した本であった。正直なところ
民族浄化については同意できるところはないし,ここまで追い込まれるとここまで人は野蛮になれるのかという印象を強く受けた。
 ユーゴの崩壊は各民族主義者の台頭によってもたらされたとされているが民族の憎悪をあおり,それをうけて様々な蛮行を
行う免罪符にする行いは悲劇を起こすこと以外の何物でもないと感じた。昨今の我が国においても民族主義でもなく排外主義でもなく
保守でもなければ愛国者でもない集団がいるがこれを野放しにすることの危険性の一端がこのユーゴ紛争を見てもわかるのではないだろうか。
 といっても,ヘイトスピーチを法により規制すべきか否かという問題については今回は立ち入らないことにしたい。

 

 

ユーゴスラヴィアの崩壊

ユーゴスラヴィアの崩壊

 

 

ターンエーの癒し 読了

 僕がこの方十年以上の冨野監督を信奉しているということを差し置いても久しぶりに
読んでいて涙が出そうになるぐらい感情を揺さぶられた。
 この本は監督が対人関係においての苦労がたたり発症してしまった鬱にも似た症状(おそらくうつ病だろう)
とどのように立ち向かっていかれたか,調子が悪くて体が動かない時にどのような状況であったのか,作品を作っていくにつれ
どのような出会いや作品に対して向き合うことで回復していったかというのを監督個人がエッセイという形で著されている本である。
 僕自身うつ病になりなにもできなくなってしまったこともあるし,今もその傷跡は癒えていない。信じていた人間の裏切りに近いような別れも経験しているし,
同時並行的に大切な肉親をも失った。どん底というのを知ってそこから再生していく話という中で「復習」であったり,信頼できる人間を得ることで
回復された氏を非常にうらやましく思うも,作品が氏にとって「癒し」になったのは本当に救いだろう。
 
この本はすでに絶版らしくようやく手に入れた本なのだが,ほんとに手に入れて,読むことができてよかったと感じることのできる本に出会えて幸せである。
ただ,この人の文章わかりにくいのよね。
 

 

ターンエーの癒し

ターンエーの癒し

 

 

フェイスブック 若き天才の野望 読了

 映画「ソーシャルネットワーク」の原作のような位置づけの本である。
この本についてはすでにいろんなところで感想が書かれているし,あらすじも紹介されているので省くが
ザッカ―バーグがスゴイのは節目節目に自分の身の丈に合った師匠があらわれたり見つけて
その人を猛進するかのように真似することによってノウハウを吸収してしまうことであるように思った。
 この本の感想はそんなザッカ―バーグの師匠遍歴であるように思う。

 

 

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

 

 

つかってみよう情報開示制度

冬のコミケに出すおまけの記事が宙に浮いてしまったので公開。3Pぐらいの分量なのでほんとにおまけですが非常に有用な制度だと思うので参考にしてどんどん開示請求してみてください。

 

** 趣旨

 

 情報開示制度は公文書等の管理に関する法律(平成二十一年七月一日法律第六十六号)及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律

(平成十一年五月十四日法律第四十二号)に定められている制度で

官公庁が業務により作成した文書を特別な事情がない限り公開しなければならないというものです。本制度はこれまで非公開とされてきた文書について

主権者たる国民の「知る権利」にこたえるものとして制度化したものであり,その制度の行使を法で認められています。

 

** 根拠

 

 公文書等の管理に関する法律(平成二十一年七月一日法律第六十六号),具体的な開示手続については行政機関の保有する情報の公開に関する法律

(平成十一年五月十四日法律第四十二号)によって法定されております。

** 開示範囲

 

 歴史的に価値を有する文書については(歴史的公文書)国立公文書館に請求すれば閲覧をすることができます。そのほかの行政文書については

個人情報が記載されている場合はその部分を黒塗りで,存在の有無を開示するだけで個人情報その他機密情報に抵触する場合は存在の有無それ自体を

回答することはしませんが,それ以外であれば開示請求があり,かつ文書が存在した場合開示されます。つまり防衛機密,外交機密などの機密指定が解除されていない

文書以外はすべて開示することとされ,開示請求したものの文書自体が存在しない(作成していない)場合は存在しないむねを回答してくれます。

 

** いわゆる特定機密保護法案との関係

 

 情報開示制度への影響が懸念される特定秘密保護法ですが,情報開示制度との影響はないかあったとしても軽微なものであるといえるでしょう。

特定機密文書への指定は法により暗号,軍事機密,外交機密に該当するものと法に指定されているためです。ただし,一度特定秘密と指定した情報について

米国のように一般市民が秘密解除請求を行えるとする条文がないために秘密指定された文書が解除されるまでその存在自体も不開示にされる,という状況については

否定できないでしょう。

 特定機密保護法案によって影響が出る好事家の方は最先端なミリオタの方か外務省ウォッチャーの中でもよりエッジに近い方ではないでしょうか。

 

** 実際の開示手続のやりかた

 

 実際の開示手続は行政文書開示請求書(http://www.soumu.go.jp/menu_sinsei/jyouhou_koukai/pdf/060419_1_A1.pdf

に必要事項を記入し,収入印紙300円)貼り付けの上開示先の省庁に送るだけで手続きは完了です。

 文書は所定の場所へ出向いての閲覧と写しの請求が選択可能です。(写しの請求の場合開示決定後実費請求がきます)

 平日の勤務時間中での閲覧指定日が多いと思われますので霞が関近辺でお仕事をされている方,学生の方以外は素直に写しの請求をした方が無難でしょう。

 実際の文書内容を指定する必要がありますが,文書番号及び発出日時がわかっている場合はそれを記載し,そうでない場合

「××事業の△△について□□の決定を行った文書」などなるべく内容を特定した文書を書いた方が後日照会の電話が来なくてお互いに楽だと思います。(何もやっていない

場合でも平日突然総務省であったり法務省から電話が来たらビックリします)

どうしてもわからない場合はどこまでの文書がほしいのかを事前に自分の中で決めておいて「○○事業開始の意思決定を行った文書」や「○○に対する処分について」

などどの局面の文書がほしいのか決め打ちしてしまって構わないと思います。ただし「○○事業に関する文書」などとすると広範になってしまうため閲覧に行く時でも複写を頼むときでも

苦労すると思うのでよほどレアケースや数件しか実例がみられないもの以外に関しては避けた方がいいでしょう。

 自分の場合は次回の記事において取り上げたいと考えている地方自治法に書かれている「資金の確実かつ有利な運用」とは何かを当時の自治省が判断を下したものについての文章を求めた

ときの開示請求書が記事末尾に掲載した文書です。あて先は総務大臣などの行政機関の長,送り先は各省庁のHPにおいて明記されていると思いますのでそちらを参照してください。

 

** 珍奇な開示もやってくれる

 

 自分は試していないのだが,「宇宙人が侵略してきた場合のガイドラインがあれば開示してほしい」という内容の開示請求もどうやら可能なようである。
 

 http://d.hatena.ne.jp/softether/20120620

 
 この場合事前に情報開示担当の職員の方が電話連絡をして「あるわけないから取り下げれば収入印紙も返せるがどうするか」という照会の連絡が来たようである。

 以上のようにあまりにも情報開示が珍奇すぎる場合半笑いで確認の電話がくるおそれが十分にあるため好事家の方は十分に覚

悟の上開示請求をした方がいいだろう。

 

** 文書が存在しなかったら

 

 文書が存在しない,もしくは不開示を決定した場合公印,割り印を押したうえで不開示決定通知書が送られることとなる。

この際,行政手続法の規定通り不開示になった理由を付してくれるのでこれをもとに補正や再度申請を行うこととするべきである。

 もちろん行政不服審査法をもとにした不服申し立ても可能ではあるが文書自体が不存在であるという以上申し立てようがない。

申請者がとてつもない陰謀論者である場合は話は別。だが,機密であるなどの要件に該当しない限り原則として開示するべきものであるために

不服申し立ては現実的ではないだろう。存在を確信しているのならば他省庁もしくは国立公文書館で歴史的公文書の指定を受けているかどうかの確認を行うべきである。

 

・情報公開窓口一覧

 

e-govにまとめているページがあるのでこちらを参照してください。
 
 

なにかとホットな原子力規制委員会も当然情報開示請求の対象となりますので興味のある方はこちらに開示請求をやってみるというのもいい記念になるかもしれません。

 

情報開示請求の見本

 次項に書式を補足する形で掲載します。基本的には開示請求を行いたい文書が特定できる内容を記載すればなにも難しいことはありません。お役所は基本的に優しいので同じ省庁であれば提出部局が異なっていても転送してくれるでしょう。(少なくとも県レベルではやってくれます)

情報開示請求で重要なのは

・住所をしっかり書く(閲覧日時の指定もしくは複写の送付先になるため)

・開示したい文書を特定できるように詳細に書く(文書番号が付番されているのを知っている場合はそれを記載すれば足りるはず)

収入印紙をしっかりはる

・返信用封筒も忘れない(忘れても大丈夫だと思いますがあとでなんだかんだ言われないように用意はするべき。切手までは貼らなくても大丈夫なはず)

・平日つながる電話番号を「必ず」記載する 請求書記載内容で文書が特定できなかった場合は連絡がきます。

 

といった感じです。公文書の開示自体はさほど難しくないですし国レベルになると専任の担当者がいるので比較的スムーズに対応してくれると思います。

 また,要綱などももしかしたら開示される可能性もあるので個人的に取り組まれている事項について知りたい場合まず開示請求をしてみるといいと思います。

 もっというと,皆さんが思っている以上に情報開示には積極的であったり協力的な職員が多い印象です。

 せっかく保有する権利ですので一件当たり300円で国のお仕事を見れるので機会があればやってみてはいかがでしょうか。

 学生の方だとゼミや卒論でもここまでやっている学生はほとんどいないと思われますのでほかの学生と差がつくと思います。

 公務員志望の方については官公庁がどのような対応をしてくれるかを見る機会であり志望する官公庁の仕事ぶりを見ることができる数少ない機会ですので開示請求手続きを実際にやるとともに今後の職場探しに非常に有意義なものになるものと思われます。

 

 

 

 

 

自分が書いた文章を読んでみる

 一年近くこのブログも更新を続けているとそれなりに積み重ねというものがある。
新年早々風邪をひいて床についているときにできることといえば本を読むことと音楽を聴くことぐらいであり,自分の中で向上が見込めるのは
もう文章とか知識を蓄えるとかそういうものしかないと考えるに至り過去の自分の文章を読み返して問題点を洗ってみることにした。

・一月ごろの文章は読めたものではない
 やはり書き続けるということの偉大な力を確信した。やはり最近の文章のほうがまだ「読める」のである。一月ごろの文章は論理の飛躍や主観で書いている
ために説明不足なものも多くみられた。最近のは二度のコミケ参加のための記事を書くにあたって気づくことができたためにようやく「読める」ようになってきたように思える。

・理想とするブログに近づいてきた感はある
 何度も言及しているとおりこのブログを始めるにあたって大いに参考にしたサイトは「モジログ」である。現在は残念ながら更新は滞っている状況ではあるが
簡潔に自らの意見を述べかつ論理の飛躍がない,感情的でないという点で参考にしている。
 そのなかで十本に一本ぐらいは自分の中でも非常に「ぽい」と感じる記事がかけていることに気付いた。がんばれば最終的に同化できるのではなかろうか。

・総括
 総括として「もう少し頑張ろう」というところである。美文をめざしてはいないが少なくとも「悪文」を書かないということを目標として,もっと活発な
記事の公開を行っていきたいと思う。

コミケ御礼

 先日開催されたコミックマーケット87において私が所属する「OT研究会」に足を運んでいただき誠にありがとうございました。
自分の書いた記事が官公庁会計のしくみというニッチにもほどがある内容にもかかわらず数多くの方が足を運んでいただき,また
その場でご感想をいただいたりして非常に楽しかったです。
 今回は余裕を持った部数を用意した(といっても50部ですが)つもりでしたがそれにもかかわらず多くの方に手に取っていただくことができなかったことは
非常に驚きとともに申し訳なく思いました。
 次回参加時には前回,今回の記事をまとめ増補改訂したものをしっかりとしたものにまとめてお出しできればと思っています。
「今度財務会計に関する部署に異動するから」や「研修資料に使える」といったおことばをいただき非常にうれしかったです。
 また次回お会いしましょう・。

お正月小説のすすめ

 中学生の自分,太宰のやりすぎで小説の類が読めなくなった自分であるが(思い出すだに恥ずかしい),勤め人になってからは
努めて正月休みにはせめて一冊でも小説を読もうと決意している。休職に伴って中断もはさんでしまったが今なお続く
習慣として非常に楽しみにしている時期でもある。(もともと小説は嫌いではないのだ)
 ちなみに今年は思うところあってディケンズの「デイビット・カッパ―フィールド」を読んだのだが来年は古典SFを読もうかと思っている。
古典をなぜ意識するのかは先日触れたところではあるがなぜSFなのかというと今非常にSF軽視の風潮がどうにも納得いかないためであり,一種の
反抗である。
 そもそもSFは夢と希望ばかりを描いたものではない。「こんなことあったらいいよね」「こんなことあったらこわいよね」という話から
「そのまま書くといろいろと問題だから未来のお話として書くね」というものまであってひとくくりにできるものではない。サイエンティフィックな
描写があると思えば精神世界に入り込んだ作品もある。ほんとうになんでもありなのであり,そこがまたおもしろい。
 SFの話は詳しい先人がおおぜいいらっしゃるのでそちらに譲るとして来年のお正月小説は小松左京である。
小松左京といえば「日本沈没」や「果てしなき流れの果に」と連想しがちであるがここは「日本アパッチ族」と「復活の日」を読みたい。
アパッチ族日本国憲法が改正され死刑がなくなったかわりに失業したら永久追放されるという一種のディストピアな世界観から始まる小説である。
小松左京の奥様が日中暇なのを不憫に思って書き下ろした話だというが話が重すぎるように感じる)
復活の日」はもし凶悪なウイルスが世界に伝播したらどうなるかというおはなしである。
 この二つお話の筋からして面白いうえに現在の情勢に似すぎている。そういうところが非常に面白いと感じて来年はコミケの在庫に埋もれながら
楽しみたいと思っている。(ちなみに今年最後に買った紙の本は筒井康孝の虚構船団でした)