論ずるに値しない。

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ようやく「悪魔の詩」読了

 上巻をずいぶん前に読んだのだがようやく下巻も読み終わりこれで読み通しということと相成った。

 この小説は主人公の「夢」のシーンでイスラム教の神であるアッラーがほかにも神はいるんじゃない?という

意味合いのことを述べていることからムスリムの方々は怒って作者を殺せという命令まで出ちゃったことで有名。

率直な感想は「そんなに騒ぐほどのことか?」というのが感想。ムスリムでもコーランに共感はするにせよ当事者ではない人間からすれば

現代版聖地巡礼のお話であるとか作者の皮肉を読む小説であるという印象しか受けなかった。

これを書かれたのが時代でいうと冷戦もそろそろ終わるかという時期で争いの種がイデオロギーから民族,宗教にシフトしていく時期であったのだが

ここまで痛烈な反響が来るとは作者も思っていなかったのではなかろうか。

 いかに悪魔的な小説であるのか

 ムハンマドアッラーから啓示をうける場面と主人公の夢の部分はリンクするというのなら主人公の見た夢とそれを受け入れない周りの人間という対比もまた

イスラム教の布教とその不受容ともリンクする。これを現代に置き換えて皮肉るのはまさに悪魔的な冒涜にあたるのであろう。

 なによりこの本は現在のイスラム原理主義者の考えと周りの人間との間の認識のずれというのを論じたというのもすごい。

現在に至っても読む価値はある本という意味ではこの本は悪魔によって作られたのではないかと錯覚もする。


悪魔の詩 上

悪魔の詩 上

悪魔の詩 下

悪魔の詩 下