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支出のしくみ 総論

 ここまではお金を「もらう」仕組みについて論じてきたが、ここからは「払う」仕組みについて説明したいと思う。
 官公庁にとって支出は非常に多くの神経を使う行為である。これは国民、住民のカネを使ってモノを購入したり、事業を行ったりするからである。そのため支出に関するしくみ、手続きは非常に多くの段階を踏んでいる自治体が多いだろう。そしてその多くの手続きは条例化されており、条例に則った手続きを行うことで適切な支出を行い、不適切な支出を行う前に発見し、修正することを目的としている。本章では支出の際に考えるべき手続きについて記述する。支出に関しては収入以上に各自治体により規定が異なっているため、自治体標準条例以外にお読みになっているあなたの住んでいる自治体の財政規則などをそばにおいて読んでみると自分のところはしっかりと制度化して適切な支出を行おうという姿勢があるか否かがわかっておもしろいので是非とも比較してみてほしい。
 標準条例に記載されていない記述については私が奉職している自治体において条例化されている部分であることを予めおことわりしておく。

 原則
 適切な支出を行う以前に支出について予測をたてずにこれを認めてしまうと二重計上や放漫な経営になりかねず、自治体の経営状況悪化はもとより住民の貴重な財産をいたずらに費消してしまうことになりかねない。
 そのため自治体は予め予算編成を行うのである。一般的な企業では支出よりも収入に比率をおいて会計、決算を分析しているが官公庁会計においては支出について多くの比重を置いて会計、決算を行っているのはそのためである。
 また、適切な予算配分を行うために原則として単年度予算であり、割り振られた予算は事故や納入遅れなどがない限りその年度内に支出する必要がある。よくいわれる「使いきらないと来年度予算が経るから無理矢理予算を消化する」という行為はよほど財政状況が豊かな自治体でない限り行われない。そもそも単年度で予算決算を行う関係上財源は決まっているのであり、またほとんどの自治体は財源の数割を起債でまかなっているのが現実でありそのような余裕はないこと、あらかじめ余ることが予想された場合その年度内で補正を行い不足している部署に再割り振りを行うためである。

余談 道路工事が三月末に頻繁に行われるのはなぜか
 年度内に舗装打ち直しなどを行ってしまうと震災や経年劣化などで直ちに補修を行うべき箇所を予算がなくて補修できません、という状況が出てきてしまうため。道路管理部署は台風や大雪などの対策もあわせて行っているところが多いためそちらにお金を回せないと行政サービスができないことになってしまうのである。

 議会の関与
 編成した予算も議会の承認がない限り成立しない。あらかじめ作った予算を議会がさらにチェックして適切であることを再度チェックするのである。また、決算も議会で審査される。これも適切な支出が行われたかどうかを確認するためである。
 また、消防車や庁舎などの億単位の費用がかかるモノに関しては別個に議会が審議する。これも多額の費用を要するモノに関してちゃんとやってるかをかくにんするためである。

・補正予算とは何か
 補助金が内示より多く出た、少なく出た場合や台風などで予め予期していた以上の費用を要してこのままだとやらねばならない事業が継続できない場合再度起債を行うか、カネが余っている部署から引っ張ってくるなど、現状に即した形に修正するために補正予算を組む。補正予算を組む場合も定例議会に上程することが定められており、この予算の支出も通常の予算編成と同様の手続きを経る必要がある。
 補正予算の目的は行政サービスの継続のためにやむを得ず行うというのが建前であるが一年前に予想していた通りに状況が推移することはあり得ないため年に二度ぐらいはどこも補正予算を組むことになる。

 特殊な制度
 このほか支出には企業と異なる制度がある。随意契約(契約する企業を官庁が決めている契約)が原則として禁止であること、競争入札事業のための契約先を決めること、支出する前に二重三重もチェックすることや補助金を得て行った事業に対して実際に国が契約や施工の際に用いた資料を調べて適正であるかどうかを改める会計検査などがそれであるが、入札や会計検査に関しては私よりもそれが専門である方が多いためそちらを参考にしてほしい。会計検査に関しては専門誌もあるため興味のある方は近くの公共図書館で探してみてほしい。

 次は実際の支出フローについて説明する。