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論ずるに値しない。

論ずるに値しない文章を毎日書く。内容は読んだ本や今まで考えてきたことがメイン。

公営企業という見方でみる民営化

Table of Contents

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1 ヒトコトでは語れない、公有物の資産価値

2 官庁会計最大の問題、「資産価値」の捉え方

    2.1 減価償却をしない官庁会計

        2.1.1 減価償却をしないと帳簿上利益が出ているように見えてしまう。

3 民営化されると運賃が下がるのは本当か

    3.1 真の目的は一般会計への逼迫を防ぐこと

4 運賃を決定するのは誰かを見定めよ

 

 

1 ヒトコトでは語れない、公有物の資産価値 

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 松井大阪府知事が大阪地下鉄の民営化、株式上場を考えているらしい。その根拠は試算したおよそ6,000億円の事業価値と民営化による経営合理化による運賃値下げらしい。民営化の是非はともかく、はじき出された事業価値にはいささか疑問を感じる。というのも公営企業に限らずおよそ官公庁の取得した財産は帳簿上の資産価値に関してかなり乱暴な取り扱いを行っているからだ。

 

松井知事:大阪地下鉄を上場の意向、6000億円超-民営化で再生 - Bloomberg

2 官庁会計最大の問題、「資産価値」の捉え方 

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2.1 減価償却をしない官庁会計 

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官庁会計においてその特異さを示す最大の事例が取得した資産に対する捉え方である。

 一般的に企業などでは取得した「資産」においては予め定められた年数において資産価値の減少を見越して償却していく。つまり収益を得るためにかかった費用を収益を得る期間に応じて計上する金額を分けてしまうのが一般的である。しかし、官庁会計においてはそうではない。資産を取得した年度にすべての費用を計上してしまう。この方法だと取得した資産が毎年度どのような資産価値を有しているのかを把握することができない。一年で作って、次の年度に使わないものでもない限り使った分だけ資産価値は目減りしていくのであるから現状に即していないのは明白だろう。

 

2.1.1 減価償却をしないと帳簿上利益が出ているように見えてしまう。 

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 一度敷設した線路、取得した車両はその年限りで使うわけではない。毎年毎年使用することによって収益を確保するのが普通である。減価償却は取得費用を耐用年数で割ることにより正確なその年の費用と収益を把握するために用いられているのである。これを官庁会計に当てはめてみると、その年にすべての費用を計上する以上、次の年からは維持費以外かからない計算になる。ただ単に収益だけを計上することになり、見かけ上膨大な利益率を出すことができる。このことにより、見かけ上非常においしい商売にみえてしまうのである。ある種立派な粉飾決算であるといえるだろう。

 以上のような理由で自分はこの6,000億円の事業価値については疑問を呈する。

 

3 民営化されると運賃が下がるのは本当か 

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 民営化すると安くなる、このような論理を聞いて久しい。官営、公営だと値上げをして、かつ値上げ幅が大きいというイメージはあの国鉄の運賃値上げが異常であったためであると推測されるが、一般的に公営企業において値上げに対する判断は非常にシビアである。まず、地方公営企業においては地方公営企業法において必要以上の利潤を得ることにたいして制約を課し、運営に支障の来さない範囲で料金を設定することを求められている。私達の生活において、水道事業や下水道事業における使用料が独占企業にもかかわらず高額でないのはこの法律を順守しているからに他ならない。もう少し住民に理解を得ることに心を砕く自治体においては周辺住民の町内会長などを委員に招聘した審議会を開催し、値上げを了承する答申が得られない限り値上げを行えないとする規則を有するところも存在する。このように官営・公営事業においては住民のために、事業を継続させるのに必要最低限の費用を徴収しないように務めるのが原則なのである。

 

3.1 真の目的は一般会計への逼迫を防ぐこと 

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 この民営化の目的は値下げや住民へのサービス向上ではなく、逼迫する一般予算会計において赤字補てん的に充当する一般会計繰り出し金をなくすことだろう。企業は当然ながら赤字を垂れ流したまま事業を継続することはできないが、公営企業においては親会社たる一般会計予算から赤字を補填することが認められているし、補填しない限り事業の性格上事業の継続が行えないことが多い。そのため、非常に多大な予算を必要とするのである。財政状況の思わしくない大阪においては真の目的はカネにもならないこの事業をさっさと手放したい。しかし、メンツやこれまでの費用を捨てるようなことはしたくもないし、できない。そのため民営化という聞こえがいい言葉を使っているのだろう。前年に発表した大阪地下鉄民営化プランにおいても民営化という大前提があり、民営化を行うことによるメリットが具体的な金額や数値によって提示されていない。民営化十年後には大手私鉄の平均値以上の収益率を得られる、という予想まで立てている。そんなドル箱事業ならば手放す必要もないだろう。

 

cf.http://www.kotsu.city.osaka.lg.jp/library/ct/20130508_mineika_plan/subway.pdf

4 運賃を決定するのは誰かを見定めよ 

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 大阪府民、大阪市民は現在運賃を決めているのは誰かを認識する必要がある。現在においては当局なのであるから、値下げを求めるのならばその声を議会に届けることにより実現することが可能であるし、建設に係る起債償還が滞っているのであればその償還がいつまでなのか、それ以降どうなるのかということを職員は詳らかにするべきだ。議員は議会において値下げを求めるべきだし、値下げをできない理由を職員に言わせるべきである。 残念ながら現段階において官営・公営企業の民営化において成功事例というものは非常に少ない。鉄道事業においてはJR東日本がほぼ唯一の成功事例だろうし、この事例でさえも不採算路線や新幹線と重複する路線に関しては第三セクター鉄道に転換することによって赤字路線の切り捨てを行っているのである。よくよく見極めなければ生活の質を下げてしまいかねない。

 以上のことから、大阪地下鉄の民営化は実現したとしても住民には得るものは少ないといえる。

 

以上