論ずるに値しない。

論ずるに値しない文章を毎日書く。内容は読んだ本や今まで考えてきたことがメイン。

持田信樹「財政学」読了

 私は大学で人より少しだけ多くの法律学と歴史、文化事業を学んだ。
だが、ちょっとしたボタンの掛け違いでカネ勘定の専門家としてカネ勘定を嫌悪する業界で生活を余儀なくされている。実はこの立場が非常にいやでなんども希望を出しているのだが、どうやらこの路線は当面変わらないだろうし、変わる前に私は仕事を辞めるだろうから、いっそのことほんとの専門家になってしまおうというジョークを思いついたので標題の本を読んだ。
 そもそもの僕の職場での専門は地方公営企業会計の財務適用(民間会社とほぼ同一の会計原則を適用すること)の移行処理と効果測定である。(最近はそれに固定資産税も加わりつつある)なので、本当に読むべきなのは「財政学」でなく、「地方財政学」(こちらは現在読んでいる)のはずなのだが、原理原則がわからないと応用ができない。
 公会計、公の経済学というのは原則として国家の考えから派生する。(国-地方という考え方は中央集権的な考えが定着するまで成立していない。存在するのは国のなかに小さな国が存在しているような状態であった)なのでマクロな観点から読み始めたのだが、なかなかおもしろい。
 この本は教科書として使われているほど初学者にもわかりやすいように解説しているし、図表も多い。そして制度趣旨まで簡単にではあるが説明しているのは非常に勉強になった。
 なかでも一番参考になったのは、「負の所得税」の解説だった。
負の所得税の解説はWikipediaなどにゆだねるとして、導入の問題点は均衡点(最低所得額をどこにせっていするか)だということがわかった。
 ところで、財政学は税制度と不可分である。つまり租税に関する考えも勉強する必要がある。そのため、税制度と税目的の説明、外国の税制の配分などが重点的に説明されているのはよかった。具体的には所得に課税するか、財産に課税するかだが、日本はどちらも同様な配分で課税できるような制度設計をされているが、海外ではどちらかに傾斜しているという。 また、近年の日本政府の最大のコストである社会保障費の肥大化の原因や国民年金問題にもふれているなど、私が常日頃考えている社会の諸問題について、原因と問題点を示していたのには驚いた。そして自分の頭の悪さにも驚いた。(十年かけても解決策を見いだすことができなかったし、根拠もしめすことができなかった)
 食わず嫌いせずに、現状の社会問題を考えるならば読むべき本だと考える。
 世の中カネがなくとも生きてはいけるが、世の中の問題の大多数はカネがあれば解決できるのだから。

 

財政学

財政学

 

 

C92お礼

 新年あけましておめでとうございます。疲れからか三が日は風邪で寝込んでおり、ご挨拶が遅れました。本年も通勤の合間にお多mの氏魅いただければと思います。
 さて、さる12月31日に開催されたコミックマーケットにて私の所属するOT研究会スペースまでお越しいただきましてありがとうございました。
 夏以上に多くの方にお越しいただき、当初のもくろみより多くの方に手にとっていただけてうれしい反面、ほしい方みなさまに行き渡ることができない事態にもなり大変申し訳ない気持ちもあります。
 「法定相続人捜索のてびき(案)」については、夏以降に加筆修正し、しっかりと製本を行い、公開する予定です。
 ブースにてご指摘いただいた部分、不明なところを修正し、さらに「失踪宣告」や「外国人が法定相続人、被相続人になった場合」や相続放棄後の方策などを盛り込もうかと思っておりますので、ご期待いただければと思います。また、わからない箇所があればTwitterやこの記事のコメント欄にご記入いただければできる限りで回答いたしたいと思いますので
よろしくお願いします。

高橋是清「経済論」読了

経済論といっても,本を書いたというより国会答弁や講演会をまとめた本であった。
テーマごとにまとまっているため,そのことだけ知りたいと思ったところのみ読めばいいというような構成になっている。
高橋是清の日本経済における功績は疑うべきもないが,氏がいかにしてその時,その施策を行ったのかを自身の口で
語ったのは第一級の史料として価値のあるものである。
ただし,当時の経済状況や国内事情をある程度抑えておかないと楽しめないのも事実。読みやすくはあるが,「畢竟」
などの現在では用いられない語句もある。芸は間口が狭いほどおもしろさが増すというがこの本もその類。
つまり人を選ぶ本であることは間違いない。

 

 

経済論 (中公クラシックス)

経済論 (中公クラシックス)

 

 

「世界を動かすダイナミズム詳解イスラム金融」読了

近年目覚ましくプレゼンスがましたイスラム世界であるが,その中での金融制度について銀行家がわかりやすく説明した本。
イスラム教といえばその教えで利息をとることを固く禁じ,それが現在に至るまでも守られているが,それではやはり金融は
成立しない。そのため利息のようなものをどのような理屈でとるか,というのが問題となるのだがイスラム金融においては利息
代わりに貸し付けた金銭によって始めた商いの利益の一部を元本とともにもらうという仕組みになっているという。
どこの世界も商人と銀行家は抜け目がない。
そして金融規模は年々拡大をみせているのだが,この本の出版年と現在では情勢が変わっているので
最新のデータを見る必要があるだろう。
この本は日本国内で生活を送るのであれば,あまり読む実益はないと思われる。しかし,見方を変えるというのは
引き出しを増やすので,読んでみても損はないと思う。新たな発見に満ちた本であった。

 

 

詳解イスラム金融―世界を動かすダイナミズム

詳解イスラム金融―世界を動かすダイナミズム

 

 

勉強不足をしることのよさ


いい年齢になってくるとその年齢だけで仕事が出来てしまうのが日本社会の良いところでもあるし,悪いところでもあるし,悪いところでもある。
しかし,そういう年齢だけの人間が跋扈すると組織は専門性,活力,収益力,並びに積極性を失う。
そしてその状況は自身が望まなくても現出する。そうならないように人は学び続ける必要がある。

# 年を取ると芽生える謎の万能感
実は,年齢を取るとヨイショされる機会が増えるので何も知らないのに知ったつもりになってしまうのである。
問題集を説いていても,知っていたと思い込んでしまうのである。そうなってしまうからこそ,試験を受けるなどして
自身の勉強不足を知ることが大事なのである。己の未熟を知るのもまた楽しいものである。

# 想定外のことが聞かれるのが多い
最近はよく聞かれることよりも思わぬ人が思わぬことを尋ねることの方が多くなってきたように思う。
仕事の場合定められたことをこなすことが求められることが多い。だからこそ当たり前のことを忘れ,教科書
などに説明される制度趣旨が正しいと思うなどの錯覚が見られる。こういう状況下において門外漢の質問は
想定の外にあるため対応できない場合はままある。そうなった時が考えるチャンスだと思うとものすごく得した気分になる。

# 年を取ることは知らないことが増えるということ
自分は昔から本を読んだり,体験したりすれば知らないことはなくなる,もしくは減っていくだろうと思っていたが,
最近はむしろ増えていくように感じる。知らないことが多いのは知ることが増えることを意味する。
もはや勉強不足を叱責する人間も少ない。知らないことが楽しいし,調べることが楽しくなるのは大人の楽しみである。
ジジイを決め込むのもなかなか楽しい。

関東の水,関西の水


折からの低気圧と高湿度で腰と肩を痛め,座ることすらキツイようなザマであるので,書くもの書けず,
やるものもやれずという状況が続いている。そんななかで二泊三日の関西旅行に行ってきたんだから
そのあとの反動というものもある。寝ていても腰が痛いし,背中が痛い。そういう心持ちで今週は生きてきた。
十代まで,生まれ育った千葉県とは別に長期休暇ごとに,もしかしたらそうでもなくても田舎に帰らされてきた。
田舎といっても大都会岡山の海向こうの,讃岐は高松という鳥なき島の蝙蝠的な都会である。この讃岐というところは
非常に面白く,東はエセ関西弁(東讃弁),西はエセ広島弁(西讃弁)を話し,いまだに万葉集の時代の発音などものこるという
くにである。うどんのだしは関西の薄いもので,雑煮の餅は丸もち(ただしあんこ入り)と食も関西圏・話し方も関西圏という環境の中で
関東生まれのわたしは12分の3ぐらいは生活させられてきた。(なので,いまだにふとした時に訛る,方言が出るなどの後遺症もある)

# そちらの水は甘いか
そのような幼少期・思春期を過ごしたからか,関西・四国圏には愛着と忸怩たるおもいをコンクリートミキサーにぶちまけたような感情を
もって生きてきているが,久しぶりの関西は「小さくなった」ように感じた。あれだけ感動した平等院も小さく感じれば,鴨川も小さく感じるし,
食い物も薄味というか味もしないと思うように,愛情をもっていたものが全て小さくなったように感じた。端的に言うと水が合わなかった。(旅行自体は楽しかったのだが,
関西の空気にノれなかった)
年をとればとるほど鈍感になるというのは誰かがいったのは間違いないのだが,あんなに好きだったものがしばらくみないうちに何も感じなくなるのは
はじめての経験で戸惑った。
十年いかねえだけで,あんなに変わるもんかねえ。変わったとしたら自分だし,学生のときの関東関西の差も仕事始めたら差が出ない。
今となっては西の水はすっかり自分には合わなくなってしまったよ。こういう主観的なものはやはり他人とは分かち合えるものではないし,
わかってもらおうなんていう気持ちもない。ただ,これがあまりかかわりない土地だったからなのか,十年以上帰ってない讃岐でも同じことになるのか
を考えると怖い。おれは根っからの関東人ではなく,うどんと関東のハーフでいたいのだ。

コミックマーケットに出ます

 早いもので,もう12月になってしまったのですが,12月といえばコミックマーケットです。
今回も幸運なことに当選いたしましたので,出展いたします。
内容は,
- 官公庁会計のしくみ(まとめ)既刊
- 法定相続人捜索のてびき 新刊
- (間に合えば)Sgt.Chung氏の新刊

です。法定相続人捜索のてびきは現時点で私のやってきた内容のまとめ本になります。
法定相続人とはどこまでを指すのか,どうやって探すのかという内容と探すときに必要な照会文をダウンロードできるようにしたなど,かなり意欲的に作っています。
二段組をやめて,一段にした関係上レイアウトや読みやすさがどうなっているのか自身がないので当初は印刷を依頼しようかと思ったのですが,コピー誌になりました。
現時点で,法定相続人捜索の仕事をやっている方は非常に少なく,いたとしても数日やれば終わり,という方も多い上に,蓋を開けてみたら民法の知識が乏しいために
配偶者と子供がいなければ相続人不存在としてしまい,不適切な処理を行うことをよく見かけます。
そのため,本書は民法の知識のおさらいから,戸籍の読み方・誰に手紙を送るべきか,本当にいない場合はどうする,というのを官庁の立場で書いています。
究極のニッチ記事ですが,残念ながらこの分野においても類書がなく,また内部においてもドキュメントを共有できていないため作成しております。
 普通の方も,おじいちゃんの相続をする前に親父が亡くなったという場合に使えると思いますので,立ち読みだけでも結構ですのでお立ち寄りいただければ幸いです。

出展日は12月31日(土曜日)
東京ビッグサイト,東P19bブース OT研究会
です。
お立ち寄りいただければ幸いです。
頒布価格等決まりましたら改めて告知いたしますので,よろしくお願いします。