論ずるに値しない。

論ずるに値しない文章を毎日書く。内容は読んだ本や今まで考えてきたことがメイン。

コミックマーケット90来場御礼

 去る8月14日(日)に東京ビッグサイトにて行われたコミックマーケットにて弊サークルOT研究会に足をお運びいただいた皆様,大変有難うございました。
至らない点もありましたがこの夏コミにてサークル参加二年目を迎えることとなりました。これからも「自分が必要と思った本」をわかりやすく,おもしろくお伝えすることができればと思っております。
 なお,次回の冬のコミックマーケットも参加する予定ですので,もし当選したらそのときにまたお会いしましょう。
本当にありがとうございました!

地方公営企業施工規則に規定されている耐用年数表のはなし

地方公営企業施工規則に規定されている耐用年数表のはなし

 官公庁会計については、驚くことに「単式簿記・現金主義会計」であるというのは当ブログでも取り上げたところだが(カテゴリ-官公庁会計から見ることができます) 実は病院や電気、上水道などは法律によって企業会計にしなければならないと定められています。(いわゆる「当然適用企業」)  そのような事情から地方公営企業法施工規則では、耐用年数表が実は定められています。(ここから見ることができます。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S27/S27F03101000073.html) 附則の別表2に定められているのですが、よく見ると「タイプライター」とか「テープレコーダー」などのレトロな文字列がいまだに見ることができます。  つまり、十年以上改正されていません。また、これらの規定は当然適用企業しか念頭に置いておらず、公共下水道事業などの法適用重点事業とされているものについての 規定がありません。(下水道においては下水管(管渠が規定にありません)

規定がない物品についてはいかなる耐用年数とすべきか

 公共下水道事業についてはすでに日本下水道協会が耐用年数表のガイドラインが作られているのでそれを用いるのが一番だと思いますが、これが策定される以前に 法適用事業としているところについては整合性がとることができません。そのうえ、公共下水道事業、簡易水道事業は平成30年度をメドにすべて法適用とすることとしています。
 ほんとこれどうするんだろうね。(すでに資産評価は行っていないと間に合わないと思うのでどこも頭を抱えているのです)

標準条例とかは作られているのに会計のルールが統一されていないいびつな状況

 これに限らず、移行する!と決めているがルールが統一されていないというのはお役所会計の制度はよくあることです。また、会計制度上自治体や地方公営企業が 赤字になることはありません。(資金不足額分起債すれば、資産額が増えるというような謎ルールが多いです)そのため、夕張市のようにある日突然総務省も気づかないうちに財政破たん するということもありました(さすがにそれ以降起債を行うときに債務超過か否かはスクリーニングするようにはしていますが、これもザル制度の印象を私は感じています)
 極端なことを言ってしまえば、県や自治体の財政状況がいいのかよくないのか、末期的な状況なのかは国はもちろん、県や自治体自身も把握していないような状況ですらあります。
連結決算を内部的にも行っていないところはなおさらわからないでしょう。

すがすがしいほどダイレクトマーケティング

 耐用年数の話は取り上げることが紙幅の関係でできませんでしたが、今お役所の一部で静かに、深く行っている官公庁会計(単式簿記)から企業会計複式簿記)への移行を行うこととされ、
これを行うとき意義、メリット、検討すべきこと、条例改正などをどれを行ってどれを検討するのかを広く薄く解説した記事をコミックマーケットにて発表します。
 役所の中の人では、検討すべき材料を素早く把握するハンドブックとして、そうでない人は「こういうことをやっている」ということを知ることができる記事になっています。
分量も一万三千字ほどなので、帰りの電車の暇つぶしの読み物としても最適です。よろしければ8月14日(日)東京ビッグサイトにて行われるコミックマーケットの「東へ54b」OT研究会に お立ち寄りいただき、お手に取っていただければと思います。
 コミケの出展内容についてはこちら(http://x68k.hatenablog.com/entry/2016/08/08/122238)にて詳しく告知しておりますので併せてご覧ください。

「裸のランチ」読了

読むきっかけ

 言わずと知れたバロウズの代表作.長年読みたいと思っていた本の一つであり,バロウズ自体が難解であるという話をよく聞いていたので二の足を踏んでいたが,卒業した大学の図書館においてあったので早速借りて読んだ.(卒業して五年以上経過しているのに図書館使い倒している卒業生のクズっぷり)
 

感想

 まず第一に,モダン文学と呼ばれる我々が「小説」と聞いて想像する文章は,心情は書いているが理路整然としており,はじめから最後まで読めば話の流れやいいたいことがだいたいわかるというようなもの(いわゆる「筋道がたっている」文章)だが,この本はそういうのはない.ドラッグ中毒特有の猜疑心やトリップしている状態,僕らには「見えていないもの」が見えている状態がそこにはあった.
 理路整然としていない.句点で区切られた次の文字とはまったくつながりのない,脈略のない文章が続く.いわゆる「考えたことをそのまま書く」という「意識の流れ」と呼ばれる手法を用いているにしてもこれはクスリをキメているとしか思えない文章の連続である.
バロウズはモダン文学ではなく,「ポストモダン文学」の代表として語られることが多い.ポストモダン文学とはモダン文学の逆をやっているような作品である.つまり,筋道がなく,理路整然としていない,脳が直接語っているかのような手法である.
 これがまた気持ちが良い.なんといっても間接的にドラッグキメているようなもんだから.章ごとに場面が飛ぶが,読み進めていくに連れて違和感がなくなっていく.そして中毒性のようなものすら感じる.これはハマる人はどっぷりハマるな,というのが本を読んでの感想.

他人にすすめられるか問題

 「裸のランチ」は数十年後まで語り継がれるだろう偉大な作品であることは間違いないが,他人にすすめられるかというとまた別の話になるだろう.人を非常に選ぶ本なのだ.薬物を求めて薬屋に嘘をついて薬品をせしめたり(太宰治の「人間失格」でもありましたね),心情が妄想狂のソレであったりとアクしかないような文章であるため,変人,変態というような謗りは免れないだろう.この本は一人でこっそりと読むような本なのだ.
 内容に触れないのはネタバレを恐れるとか「○○はいいぞ」のようによくわかんないけどよかったからとかではない.この本そのものにスジがないんだから感想もクソもないのである.
 読む薬物とか,雰囲気を読む本というのが私のこの本に対する感想である.
すごいおもしろかったが,内容は頭に残らない,だがもっとバロウズが読みたい!という欲求を定期的に覚えるようになる・・・というなんとも不思議な本であった.
 一生に一度は読んでみても決して損はないと思う.おすすめ.

裸のランチ (河出文庫)

裸のランチ (河出文庫)

夏のコミケの出展内容のご案内

コミケ出展記事のご案内

 来る8月14日(日)に開催されるコミックマーケット90に出展します。所属するOT研究会としては四回目の参加となります。
 以下出展記事のご案内です。

官公庁会計のしくみ(まとめ)(新刊)

これまで発表してきた官公庁会計のしくみの総論と手続き編の二記事を一冊にまとめた本となります。誤字修正と
大阪府方式と東京都方式,企業会計に移行するならどちらにすべきか」という内容と,
地方公営企業が法適用することにより消費税の節税効果があるというがどういう意味なのか」の解説を新たに書いておりますのでこの二記事をすでにお持ちの方にもお楽しみいただける内容となっています。 総ページ数41.
頒布価格300円

あっ・・・(冊子)第四号(新刊)

官公庁会計から一般企業会計の移行について概説した記事が載ります。
また,「固定資産税が究極に安い家を新築しよう!」というネタ記事と,「ドイツ海軍新型フリゲートについて」「三葉虫について」 記事ものっています.
後2つの記事は私ではなく,研究会のSgt.Chungさんと柴犬さんが書いております.
総ページ数33.
頒布価格300円

あっ・・・(冊子)第三号(既刊)

昨年のC89にて発表した固定資産税(家屋)評価のしくみ(木造編)と三洋虫についての解説をまとめた一冊。固定資産評価に興味のある人におすすめ。在庫僅少です。
頒布価格200円

以上の内容にて,当日お待ちしております

以上の本でお待ちしています。質問等ありましたら私が在席しておればお答えできる限りお答えいたしますので、遠慮なくどうぞ。
また,官公庁会計のしくみ(まとめ)とあっ・・・(冊子)四号に掲載している記事が「官公庁会計のしくみ」の全記事になります.
また,まとめ本は表紙に「役所の小冊子で使いそうな色紙」を使っていますので職場でも,おうちでも「ぽい」本を読んでいるように見えると思います.
8月14日(日)は「東へ54b」OT研究会にて私と随意契約,しよう!(直球)(会計法第29条の3第5項、予算決算及び会計令第99条第2項~第7号の規定による随意契約としたい.)

官公庁会計のしくみ 移行編のもくじ

官公庁会計のしくみ(移行編)もくじ(案)

 以下の通りもくじに従い今後記事を作成し、そのまとめを夏冬のコミックマーケットにおいて発行する予定である。
 この目次はあくまで現段階での予定なので執筆状況、進捗、および法律改正により加除されるおそれもあるのでご留意願いたい。

はじめに(本稿の趣旨)

簿記制度の変更

 単式から複式へ

実際の移行について(地方公営企業法非適用企業を例に)

体制の策定

  • 独立企業となるか、財務規定だけ適用するか
  • 自治体内での意志決定(首長決裁)
  • 庁内説明会の実施
  • 条例改正(準備)

    移行の届け出

    想定財務諸表の策定

  • 財務諸表の作り方
  • 固定資産の扱い(減価償却について)
  • 法定耐用年数が定められていない場合の耐用年数の合理的な策定
  • 官公庁特有の取引における仕訳の検討
  • どのような会計方式で移行するのか(総務省基準モデルなどの特徴と移行難度)

    移行に伴う諸制度に対応した電算システムの導入

  • 会計システムの導入
    -- 補助金がつくのでそれの申請及びヒアリング
  • 市販の財務会計ソフトからの改良
  • フルスクラッチするか

    法適用にむけてのテストラン(省略可能)

    議会上程

  • 法適用企業への意向に伴う諸条例の改正・創設
  • 打ち切り決算(単式簿記における会計の終了決算の議会承認)
  • 想定財務諸表の公表

    国・県への諸届

  • どの制度を適用するか
  • 財務諸表及び決算統計

    金融機関への周知・再契約

  • 再度指定金融機関の設定が必要
  • 地方自治法に基づく金融機関の長のハンコが必要な場合
  • 資金調達及び現金出納機関をどうするか。維持か・減少か
  • それによる条例改正の必要性

    移行における諸問題

  • 資金繰り
  • 移行における当初の運転資金をどうする
  • 起債
  • 職員の知識不足をどのように補うか
  • 一般会計からの繰り入れ・繰り出しの取り扱い

    いわゆる突如として現れる「赤字」「債務超過」への説明

    さいごに

※以上の章立てはあくまで全体像であり、C90にて発表する記事はこの中を論ずるにあたっての概論となります。

役所はなぜ例外を許したくないのか

導入

 役所はなぜ四角四面の決まりきった対応をするのか。
割と有名なお話で「役所はカタイ。柔軟性がない」というものであるが、これには理由がある。公共性故にというわけではない。自己防衛のために柔軟性を失うのである。

前例拘束主義によるもの

 お役所と呼ばれるものは基本的に前例に拘束される。
これはいいとこともある。「考えなくていい」ことと「同じことをすれば同じ結果になる」ことである。
 働いている人間としては同じことをするときになにも考えないでいいので楽である。なれてしまえば流れ作業になるためである。言い換えれば自動化できうる仕事と言うことになるのだが、それは親方日の丸。自動化しても仕事の食いっぱぐれは採用されればない。エクセルで自動化して起案して決裁とれればあとは何にもしなくてもいい。これほど楽なことはない。
 前例拘束主義は住民側にもいいことがある。「同じ書類を出せば同じことをやってくれる」ことである。同じ書類を同じタイミングで出せば同じ結果がでると言うことはやり方がわかればこちらもなにも考えずに氏名や住所、金額を変えれば結果が降ってくる。これまた楽である。前例さえあれば。
 前例がない場合、また変な前例がある場合はその限りではない。悪法もまた法。法律に基づいてお仕事をしているお役人はどんなにおかしくても前例に拘束されるのである。

例外を許すと起こりえること

 住民に一度例外を許すと原則をすっ飛ばして例外措置を求め出す。
耳ざとい人がどこからか聞きつけて「この人にはこうしたんだからおれも同じようにやれ」と。
 この場合断ることは容易ではない。過去に一度前例があるのだから。原則を説明しても聞く耳は持ってくれない。日本人は例外扱いされるのが好きな民族なのだからそれはもう原則を説明すると怒り出す。
 つまり、一度例外を許すと原則は雲散霧消。「これっきり」という言葉も必ず「これっきり」とならない。つまり一度甘く例外を許すとそれにつけあがる人がでて後世、もしかしたら明日面倒な説明やクレームを受けざるを得ない。たまったもんではないのである。

本当のところ住民は信用できない。

 結局のところお役所は住民との口約束なんて一ミリも信用していないし、頼りにしないのである。違う住民や翌年同じ人がそれを反故にすることなんてよくあること。証拠なき約束なんて信用するほうが悪いという論調になる。文書取り交わしたほうが日数はかかるが楽なのである。
 住民との口約束なんて信用するほうが間違っている、と。徹底的に信用できない。
 なんで信用してくれないのか、という考えがあたまをもたげるかもしれないが過去の住民の行動が信用を失うに十分すぎるほどだったのである。
 行動で失った信頼や信用は行動で取り戻すしかないが、取り戻さなくても結構である。
 淡々と仕事をするんで変な横入りしないでくれよ、ともあるし決まった後に言い出してこないでくれよと思っているのであるから。
 決まる前に税金でも何でも相談したり確認したりすることは大歓迎なので疑問に思ったら聞いてくださいね、というのが役人のスタンスなのでわからないことがあればメールでも電話でも直接で向かうでもかまわないので聞いた方がいいよ。
 役所の人は根はまじめだからはなせばわかる、と思ってるんだから。

神の代理人読了

神の代理人読了

 塩野七生著「神の代理人」を読んだ。初期の氏の本なのであるが、「ローマ人の物語」でさえ主観が強いという意見のあるがこの本は主観もあるし創作もあるしでなかなかアクの強い本であったが、世界史未履修の自分としてはとっかかりとして非常におもしろい読み物であった.

神の代理人とは

 ローマ教皇のこと。ローマ教皇は神と人をつなぐ天界の鍵をもっているとされており、教皇はいわば神の代理人である、という論理からそのようにいわれている(らしい)

本書で取り上げられている時代 

 いわゆる「ルネッサンス」期の教皇でかつしくじっている三人の教皇についてかかれている。

しくじりかた三者三様

  • 自分で十字軍の総大将となるも兵員が集まらず集結予定地で志半ばで果てる
  • イタリアの統一及び外国人の干渉をとめるために兵を集めるが、結局は大国から兵隊を借りたためにさらなる混乱を招き、そのことを悟りながらも時すでに遅し
  • 文化振興のために巨額の金銭を投じるが、それがやりすぎたために財政が破綻寸前になる
    と、裏付けなく野心を抱くと成功するどころかさらなる混乱を招くだけ、というなんとも悲しい結果しかもたらさないということを描こうとしている。

善意のどうしようもなさ

 とはいえ、これらの行動も「キリスト教世界の救済」であったり「イタリア統一」であったりと「善意」から起こしたものであるからしてタチが悪い。
 「地獄への道は善意によって舗装されている」という言葉があるように社会が崩壊に向かうときは必ず身の丈に合わぬ「善意」がその発起点であることが往々にしてあることであり、それは本書に限らず歴史が証明している。
 日本ではしばしば「戦前」と「戦後」で歴史的断絶があり、「戦前」の状況下は「戦後」では現出しないと皆無意識に認識している。(例外は事故の主張を実現するためにいたずらに軍部の暴走をとりあげるときのみである)
 しかし、日本においては戦前も大衆の善意によって天皇機関説を廃棄したり、満州事変による朝鮮総督が予備兵を出兵したり、国際協調を一人の全権大使が破棄した上に連盟を独断で脱退することを決めたことを追認したりと行ってきており、現代においても実現はしないものの同様の事象が多々見受けられる。
 重要なのは「歴史」に学び、現在の状況を分析することであり、社会状況に置いて類例のない状況というものはほとんど存在しない。
 そして「善意」の暴走が破滅的な結果を起こすことは幾度も実証されている。それを我々は知らないだけだ。
 本書は「善意」からの破滅を取り上げた本であるように私は思えてならない。